何度担任しても,来年度担任する学年が決まった後,この学級開きの前までは気が引き締まります。初任者の先生はなお更だと思います。中村氏はこの学級開きに1年のエネルギーの8割を注ぐとも仰っています(中村,2020)。そして,私も同じように思います。
すでに担任をされている先生は,ご存じのことだと思いますが,これから教師を目指す方もいらっしゃると思うので,少し説明をします。私の現場経験からお話しすると,4月1日から怒涛の準備期間が始まり,それは,始業式の前日まで続きます。会議や学年会など打ち合わせの連続です。その上,この短い期間に学習環境を整えるための教室,教具の準備から学級事務,授業準備等,担任がやらないといけない仕事は山のようにあります。正直,1分でも惜しいという感じです。
さて,このような超忙しい状況の中で十分な学級開きの準備にどれほど時間をかけられるでしょうか。私の経験からすれば,はっきり言って4月1日から準備を始めても間に合いません・・なんとか始業式の日の週の週案を立て,その日の予定をこなすだけで精一杯です。実際に,始業式の日は1時間ほどで子どもは下校しますし,翌日から当番や係,高学年なら委員会やクラブの所属など,決めないといけないことがたくさんあります。
≪≪始業式までに行うこと≫≫
1)教育観・指導観を明確にする
2)3月のゴール設定
3)指導の柱を立てる
では,もう少し具体的に1つずつ見ていきましょう。
1)教育観・指導観を明確にする
以前の投稿でも書いたのですが,個々の教師は教育理念をもって教育活動にあたります。しかしながら,1つ1つの細かい指導に関して,なぜ,そのように指導するのかと問われたら,「自分が小学生の頃,そのように指導されたから」「他の先生もそのように指導しているから」などといった漠然とした答え方しかできないことがあるのではないでしょうか。例えば,子どもに発言させる時,立って発言させるか座って発言させるかどちらにしますか?また,その理由は?特に,高学年や荒れた学級の子どもたちは教師の細かな指導1つにも敏感に反応する傾向にあります。その時,教師はその指導理由を明確に答えることが求められます。「普通は,そうするのです!」では理由になりませんよね。つまり,教師の1つ1つの指導にも教師の教育観・指導観が顕れているのです。
2)3月のゴール設定
私も経験があるのですが,4月当初,初めて担任する学級の子どもたちとであった時に,「いいクラスにしたい!」という思いが強すぎて,子どもたちのできていないことに注目してしまいがちです。できていないと思うということは,逆にいえば,できている状態を想像しているということです。つまり,4月に子どもたちと出会ってすぐに教師の理想の子どもや学級の状態を求めてしまっているということです。
こうなると,始めから教師の理想とすでに近い,つまり,教師が求めることがすでにできている学級ならよいのですが,教師の理想とかけ離れている学級では,教師にとって子どものできていないことが目立ちます。すると,教師の指導が増え,子どもたちも教師自身もストレスを抱えて過ごすことになります。この初めの教師と子どもたちのボタンの掛け違いは段々と大きくなり,1つ間違えば学級崩壊へとつながる恐れもあります。
では,教師の理想とかけ離れている学級では,どうすればよいのでしょうか。それには,最初はとにかく,子どもたちの実態をよく観察し,できていることに注目します。できていることを褒めて価値づけすることで,教師が理想とする状況へ少しずつ近づけるしかありません。つまり,1年後の子どもたちが進級する直前の3月において,「こんな学級であればよいな」と思う学級像を描き,3月の時点でのゴールイメージを描くのです。この長期的な指導のアプローチを忘れて,一足飛びに子どもたちに教師の理想像を押し付けてしまいがちです。
また,教師が担任する学年が2学級以上の場合,どうしてもお隣の学級の状態と自分の学級の状態を比べてしまいます。以前は,私もそうでした。そして,全校朝会など,全校児童が集まった時などに,自分の学級の話を聞く態度が悪いとすぐに指導してしまうのです。ひどい時には「他のクラスはしっかり聞けていたのに,あなたたちはどうして聞けないの!」というようなお説教を始めてしまいます。
待ってください!4月のスタート時点では,学級の実態は違って当たり前なのです。それぞれの学級においてスタートの状態から1年間で成長していけばいいのです。ですが,教師はどうしても,比較において自分が担任する学級の状態を評価しがちなのです。まずは,自分の学級の実態をよくみることが大切だと思います。
3)指導の柱を立てる については,次の投稿で書きたいと思います。
【引用文献】
中村健一 「」
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